CLOSE

OPEN

LINE

小さな学校の大きな挑戦

たまひじりのA知探Q 学びの玉手箱!
たまひじりのA知探Q 学びの玉手箱!
聖ヶ丘ニュース
校長

【校長ブログ】新年のご挨拶 ~牛にちなんで~

明けまして おめでとうございます

 2021年、辛丑(かのとうし)の幕開けです。今年で12歳を迎える丑年の人のうち小学校6年生の人の中には残り1か月に迫った中学受験に向けて努力を重ねていることでしょう。丑年の人には「温和で努力家が多い」と言われます。受験生の皆さん、これまで培った力を信じて希望の学校に合格することを願っています。この時期は十分な栄養・休養・睡眠がとても大切な時期になります。COVID-19 感染症についても一抹の不安はあるでしょうが、必要以上に怖れず積極的に予防をし、周囲の感謝を忘れずのぞみましょう。多摩大聖ヶ丘は、すべての受験生の皆さんを応援しています。

 さて、正月定番の話題と言えば今年の干支である「牛」の話です。日本固有の在来牛としては、山口県の見島牛(みしまうし)と鹿児島県トカラ列島の口之島牛(くちのしまうし)の2種が知られています。見島牛は、萩市の沖およそ45kmの日本海に浮かぶ見島に棲息する牛。もう一つの口之島牛は、屋久島と奄美大島との間に連なるトカラ列島*の一つ、口之島に棲息する牛のことです。どちらも江戸時代に放牧された牛が野生化したもので、明治時代に入ると日本各地で牛肉需要が高まり、ヨーロッパから輸入された牛と日本の在来牛との交雑が進み、固有の在来種がいなくなりました。しかし、隔絶した離島だからこそ、見島と口之島では輸入牛と交配することなく固有の在来種が守られてきたのです。特に見島は、その島を空から眺めると牛の形(別掲PDF参照)をしており、今年にはピッタリです。また、見島牛は天然記念物にもなっており、少し古い資料になりますが、2006年の調査では雌85頭、雄14頭が登録されています。この2つの牛は、現在、上野動物公園で飼育されており、見学も可能です。欧米の肉用牛に比べて、日本の在来牛は農耕牛であり、見島牛も口之島牛も日本人が扱いやすく背が低くて小型の牛です。

 商品化された牛肉としては様々な地名のついたブランド牛が有名で、これらを総称して「WAGYU」という新しいブランド名が海外で有名になりつつあります。しかし、これは先に挙げた欧米産の牛と交雑したもので、「WAGYU(和牛)」とは言っても、日本の固有種ではありません。

 偶然にも私は両方の島を大学1年の夏(1973)3(1975)の夏と春、それぞれ3度ずつ訪れたことがあります。両島では離島生活と民俗についての調査が主でしたが、当時は在来牛には興味がなく、共通点としてトビウオ漁の聞き取り調査をしました。

 ところで、牛と言えばワクチンと深い関係があります。そのルーツは「ジェンナーの種痘」にあります。「牛痘にかかった人は天然痘にかからない」という民間伝承からジェンナーは「牛痘で天然痘を予防できるのでは?」と考え、天然痘ワクチンを開発しました。ワクチンは英語ではvaccineと表記しますが、その語源はラテン語のVacca(雌牛)に由来しているのです。

 過去における感染症流行の事例と同様であれば、二年目が大切です。そこで、高校3年生の始業式は学外の別会場としました。ワクチン開発によるCOVID-19感染症収束への道は不透明であり、2度目の緊急事態宣言が週末には発出されます。しかし、人類は叡智を結集・駆使してこの難題を終息へ導いて行くと信じています。それまでは、本校の教育理念(自主研鑽、健康明朗、敬愛奉仕)の精神に立ち返り、積極的に感染症予防に努め、正しく怖れ、感謝を忘れず弱者へ配慮する気持ちとゆとりを持って社会と紡いで行きましょう。それが「多摩大聖のブランド」となるはずです。もうしばらくの間、緊張感を持ってのぞむよう皆さんの協力と心遣いをお願いします。

参考資料

*トカラ列島については、2020918日、23日の「校長ブログ」で紹介しました。

1) 出口 栄三郎・西中川 駿・後藤 和文・阿久沢 正夫(1998)口之島野生化牛の生息頭数 と環境調査, 「日本畜産学会会報」41, pp.14-18.

2) 中西 良孝, 藤橋 大輔, 萬田 正治(2003)鹿児島県トカラ列島における在来家畜の意義:口之島野生化牛の保護のための

生育調査「南太平洋海域調査研究報告」38, pp.97-103.

3) 長島 孝行 (2013).日本在来牛 見島牛と口之島牛「新・実学ジャーナル」201310月号, p.4.

4) 山口県「山口の文化財 見島ウシ産地」https://bunkazai.pref.yamaguchi.lg.jp/bunkazai/detail.asp?mid=30032&pid=bl

(2020年1226日閲覧).