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小さな学校の大きな挑戦

たまひじりのA知探Q 学びの玉手箱!
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聖ヶ丘ニュース
校長

【校長ブログ】満月の祭り

 昨日は、140年ぶりの部分月食。と言っても月の98%近くが隠れる「ほぼほぼ皆既月食」でした。学校からも太陽が富士山の向こう側に沈んだ17時前から「食」が始まり、19時前まで観察できました。天文部では、校舎屋上の天文観測室から綺麗な月を眺め、写真を撮影して楽しんでいました。

 ところで、ミャンマーの暦では、満月をとても大切にしており、基本的には満月の日に祭は設定され、満月だから市場がお休みだったりもします。そこで11月の満月の日は「ダザウンモン満月のお祭り」という祝日となっています。仏教徒が大多数を占めるミャンマーでは、この日、僧侶に袈裟やお布施などを贈る習わしがあります。特に、寄進する袈裟は1日で織り上げられなければならず、人々は夜通し折り続けるとも言われています。ヤンゴンの中心地にあるシュエダゴンパゴダから、毎年、この日に放送されるテレビの映像では、辺りが薄暗くなる中、輝く黄金の仏塔の前に人々が集まって整然と正座して祈りをささげていました。揺らめく蝋燭の灯りに、照らされる表情が印象的だったのを覚えています。果たして、コロナ禍とクーデター後のミャンマー、民衆の活動が大きく制限される中、この日のお祭りはどうだったのでしょうか?

 イギリスの作家:ジョージ=オーウェル(190350)は、英国の植民地下にあったビルマ(現在のミャンマー)に勤務し、ここを題材にしたエッセーや小説をいくつか残しています。オーウェルの代表作と言えば『1984(最新刊は田内 志文訳、角川文庫、2021年発行)ですが、このディストピア国家を描いた作品の原点もミャンマーでの体験にあると言われています。

 しかし、今のミャンマーで起きている現状に目を移せば、民主主義を守ろうと圧倒的多数の国民が自らの血と生命をかけて戦っているのです。現在、日本には約3万人のミャンマーの方々が生活しており、特に高田馬場(新宿区)は多くのミャンマー人が集まり、彼らの間では「リトル=ヤンゴン」とも呼ばれています。夕方にもなると、戸三小通りには、近くの日本語学校での授業を終えた留学生など多くのアジア系の人々で賑わいます。さまざまな食材を使ったミャンマーカレーの「ヒン」、お茶の葉を発酵させサラダの「ラペットゥ」、ナマズで出汁をとった米粉の麺「モヒンガー」など、本格的な刺激的な辛さのミャンマー料理店が20軒以上もそろい、他にも食材屋、カラオケ店、マッサージ店などから流れてくる音楽もエキゾチックです。ここに集まるミャンマー人の皆が、祖国を憂え、力を合わせて何らかの形で支援活動を行っています。

 新型コロナウイルス感染症の流行が何とか一段落し、政府も海外から労働者の受け入れを復活、拡大させる方向に舵を切っています。しかし、同質性が重視される日本では、とかく異質なものに対して奇異のまなざしや偏見を持った言葉をあびせることが時として見受けられます。ミャンマーの問題も、いじめ問題もしかり。「他人を嫌う」要因はすべて同じです。それを取り除く近道とは、決められたレールから脇道に少しはみ出す「自分を変える」ことなのではないでしょうか?