小さな学校の大きな挑戦

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聖ヶ丘ニュース
校長

【校長ブログ】放課後農業倶楽部

 今日で9月晦日となり、猛暑の夏に終わりを告げ、丘の上の学び舎では夕暮れと共に虫の音を一段と大きく感じる季節となりました。学校周辺では、さまざまな大きさと種類のシイの実が路上を埋め、実りの秋を感じるこの頃です。

 このところ生徒の自主的活動である放課後農業倶楽部(仮称)が元気です。

 放課後になると、週に何度か「いまから農場に行きます。興味のある人は昇降口に集まってください。」と、顧問の鈴木寛之先生の校内放送が流れてきます。今週も、中学12年生を中心に契約した小さいながらも農場(畑)から持ちきれないほどの生姜を持って帰って来ました。

 生姜と言えば、この季節、全国の各地で生姜の収穫を祝って「しょうが祭り」行われます。近くでは、八王子駅からも京王八王子駅からも歩いて5分の浅川に近い永福稲荷神社で毎年9月第一土曜日に行われています。例年の例大祭では、神社に続く細い路地では、生姜を売るたくさん露天が並んでいます。江戸時代に始まったという由緒ある祭りでは、無病息災を祈る厄除けの意味があると伝えられており、今年はコロナ禍を払うということ注目されました。

 ところで、ここで売られている生姜は、「八王子しょうが」と呼ばれ、『江戸東京野菜』*22品目の一つに数えられる地場の野菜です。80年頃前の昭和初期に、あきる野市二宮神社のしょうが祭の際に入手し、それ以降、八王子の加住町で栽培されているというものです。黄金色し「辛み」が少ないこの品種、以前は「八王子こがねしょうが」と呼ばれていましたが、江戸東京野菜に認定されてから「八王子しょうが」と呼ぶようになりました。現在では八王子市内の10軒の農家だけが栽培を続けています。

 さて、ショウガの学名は Zingiber officinale (Willd.) Roscoeで、ショウガ科ショウガ属の多年生植物で熱帯アジアが原産地と言われています。英語名はGinger、飲み物のジンジャエールのジンジャーです。インド南東部や中国では紀元前から栽培され、11世紀頃にはヨーロッパに伝わったとされています。また、日本人とショウガとの出会いでは、『魏志倭人伝』に登場する「薑(キョウ)」がショウガを意味するとされ、3世紀頃には伝わっていたと考えられています。ただ、最初の頃、日本での評判はあまり良くなく普及しなかったそうです。奈良時代になると、遺跡から発見された木簡にも現れ、平安時代には百科事典の元祖ともいうべき有名な書物『和名抄』にも登場しています。

 八百屋やスーパーマーケットの店頭に並ぶ生姜には、「根しょうが」と「葉しょうが」があります。いずれも同じ種類ですが、「根生姜」は夏前に収穫し、そのまま2か月以上、乾燥させたものです。こちらは、摺り下ろして刺身の薬味や料理の調味料として利用します。一方、「八王子しょうが」のような収穫後、そのまま利用するものは茎と葉がついている「葉しょうが」です。こちらは、甘酢漬けやそのまま豚肉を巻いて焼いたりして利用します。「葉しょうが」としては、都内では「谷中しょうが」も古くから有名です。

 今回の話の最後に一つ、日本語の表記について注意事項をあげておきます。植物(生物)として扱う場合は「ショウガ」とカタカナで、収穫後に農作物として扱う場合、つまり農業統計では「しょうが」とひらがなで表記することになっています。今回登場した「八王子しょうが」は登録商標になっているので、「かぎ括弧」で著しています。なお、漢語の「薑」では、生のものを「生薑(ショウキョウ)」、乾燥したものを「乾薑(カンキョウ)」と呼ばれたそうです。その「生薑(ショウキョウ)」が訛って「ショウガ」となったと伝えられ、漢字の「薑」が「姜」と同音ゆえに代用されたとされ、今日に至ります。

 昨日、101日は旧暦の815日、「中秋の名月」です。わが家では、月見団子をつくって「十三夜」祝いをしました。皆さん、いい写真が撮れたでしょうか…。

*大竹 道茂(2020)『江戸東京野菜の物語』平凡社新書,254ページ. 2020年現在、JA東京では「江戸東京野菜」として50

目の野菜と7品目の穀物を認定登録しています。