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聖ヶ丘ニュース
校長

【校長ブログ】焼き場に立つ少年について考える

 今日は『終戦の日』。8月5日の校長ブログでも説明しましたが、若い皆さんも、夏の間に一度は立ち止まって「日本の過去」を考え、学んでほしいと願っています。そこで、コロナ禍の短い聖ヶ丘の夏!「校長特別課題」第3弾を、皆さんに出したいと思います。ただし、今回は事前予告が十分でなかったため、テレビ番組を視聴・録画できていなかった方は参加できません。もし機会があったら授業やホームルルームの一環として、視聴する機会があると思いますので、宜しくお願いします。

 皆さんは、「焼き場に立つ少年」と題された写真を見たことがありますか?この写真は、1945年8月長崎に原爆が投下された直後に、アメリカ人海兵隊写真班のカメラマンとして従軍・来日した:ジョー=オダネル(1922-2007)さんが撮影したものです。写真には、背中に弟らしき子をおぶって、口を真一文字に噛みしめ、まっすぐ前を向いた小学生の男子が写っています。

 オダネルさんは、終戦直後の9月から翌年の2月まで北部九州に従軍し、主に日本の武装解除の状況を撮影する仕事に携わり、この半年の間に約4000枚の写真をアメリカ軍に提出しています。その仕事合間に、被爆した長崎を訪れ、この写真を撮影したのです。

 2017年末、カトリック教会が定める「世界平和の日」(1月1日)に向けて、ローマ教皇フランシスコは、この『焼き場に立つ少年』写真に「戦争がもたらすもの」というメッセージを添えて全世界に配布して話題になりました。昨年、ローマ教皇が長崎を訪問した際にも、この写真のことが話題になりました。

 この写真に写っている人物はだれなのか?この子は生き延びることができたのか?戦後の混乱の中、どのような生活を送ったのか?戦災孤児と考えられていますが、当時、長崎市内だけでも少なくとも2300人は、家族や家を失い、食べ物や住む家さえ失って路頭に迷う子どもたちがたくさんいたのです。

さて、今回の課題は、NHK長崎放送局が3年かけて調査し、今月放送されたETV特集『"焼き場に立つ少年"をさがして』(60分)を元に考えてみたいと思います。ローマ教皇の指摘する通り「道徳」の授業として、皆さんが戦争の悲惨さや無意味さについて気づき、平和な社会をどのように達成していくかという視点が第一です。これは、学年、校内外を問わず、全ての人に共通して考えてほしい課題です。

 ただ今回の特別課題では、それだけでなく、中学3年生以上の皆さんには、「論文の書き方」の参考にも役立ててほしいのです。どのようにして証拠固めをし、実証的な研究まで高めることができるかのかという視点でも、参考になると思います。NHKの調査の中でも、途中で挫折したり、無意味になってしまった調査や視点もあったと思いますが、1枚の写真に科学技術を駆使して新たな証拠を見出し、新しい視点から推察する『科学の醍醐味』をも味わってほしいと思います。その点から番組を整理するために、特別課題を課したいと思います。

 *写真:ジョー=オダネル、聞き書き:ジェニファー=オルドリッチ、平岡豊子訳(2017)『トランクの中の日本米従軍カメラマンの非公式記録』小学館、115ページ.

 *吉岡 栄二郎(2017)『「焼き場に立つ少年」は何処へ』長崎新聞社、143ページ.