【校長ブログ】ラジオで読む小説
NHKやTBSラジオ番組に、小説の朗読、ラジオドラマなどがあるのをご存知でしょうか?こうした番組は、私が小学生高学年の頃からあり、毎週土曜日の夜9時、兄弟姉妹が書斎に集まって聞いていたことを思い出します。当時、遊び疲れた私には9時といえども、眠くて途中で何度も夢の世界に旅立った経験もありました。そんな中、印象的で今でも覚えているのは、森繁久彌さんと加藤道子さんの朗読と古関裕而さんの音楽による「日曜名作座」です。陳舜臣さんの『青玉獅子香炉』や野上 彌生子さんの『秀吉と利休』など。他にもラジオで知った作品といえば小松左京さんの『日本アパッチ族』やO.ワイルドさんの『ドリアングレイの肖像』などがあります。兄や姉に交じってちょっぴり大人社会の仲間入りをしようと背伸びしていた頃を思い出します。
今でもNHKラジオには「新日曜名作座」(毎週日曜日午後7時20分~7時50分。西田 敏之さんと竹下景子さんが何役もこなす連続朗読)、NHKFMラジオ「FMシアター」(毎週土曜日午後10時00分~10時50分。俳優たちによる一話完結)、NHKFM「ラジオ文芸館」(毎週月曜日午前1時05分~。ラジオ深夜便の番組中、一人のアナウンサーと音響効果によるドラマ。一話完結)、TBS「ラジオシアター 文学の扉」(毎週日曜日9時~9時30分。中島朋子さんが名作の名シーンをゲスト一緒にドラマとして演出)、文化放送「青山二丁目劇場」(毎週金曜日午後8時30分~9時00分。青二プロダクションの声優が演じる)などがあります。
私は映画も好きでコロナ禍前は毎週のようにシネマコンプレックスに出かけましたが(65歳以上は割引大きい)、ラジオドラマはまた違った楽しみがあります。何と言っても言葉と音響だけで情景を想像するからであり、俳優やアナウンサーが感情移入した科白や音響効果だけで風景を見せる技術に魅力を感じます。映像に流されるより、ラジオドラマの方が想像力をかき立てられます。その意味で、ラジオドラマは、読書が少し苦手な人にも入門としてお薦めです。また、ラジオの番組づくりを映画にした作品に三谷 幸喜監督の『ラヂオの時間』という映画もあります。
さて、今週の月曜日早朝の「ラジオ文芸館」では、吉田 篤弘さん作の『永き水曜日の休息』(2016年『空ばかり見ていた』文藝春秋所収)を岩槻 里子アナウンサーの語りでした。物語は…
流浪の床屋を巡る12の物語の一つ。小さな町で小さな床屋を営むホクトは、ある時、吸い込まれそうなくらい美しい空を見上げて決意する。「私はもっともっとたくさんの人の髪を切ってみたい」。そして、彼は鋏ひとつだけを鞄におさめ、好きな時に、好きな場所で、好きな人の髪を切るために日本を出て、世界に旅立つのだった…。
最後に音に関連した話題を一つ。全国大会出場の常連校である北海道立旭川商業高等学校の吹奏楽学部では、今年度前半のコンクールがすべて中止となった今、3年前に卒業した先輩の残した合唱曲『夜明け』をメンバー全員が自宅で録画録音して、部員の一人が編集したものをYouTubeで配信しています。皆さんも、ぜひ一度6分間だけ聞いてみてはいかがでしょうか。
*陳 舜臣(1977)『青玉獅子香炉』文春文庫
*野上 彌生子(1969)『秀吉と利休』新潮文庫
*小松左京(1973 )『日本沈没』角川文庫
*O.ワイルド、福田 恆存翻訳(1962)『オスカーワイルドの肖像』新潮文庫
*三谷 幸喜監督(1997公開)『ラヂオの時間』東宝
*「夜明け」~旭商吹奏楽部~ https://www.youtube.com/watch?v=zmkuHR45pwA(2020年6月20日視聴)